日経ビジネスONLINE 2012年10月4日 池上彰の「学問のススメ」

「生物学こそは究極の教養である」

東京工業大学 本川達夫教授×池上 彰 第6回(最終回)

お二人の対談中(6/8)「体の教養を大切にしよう」の項に「高専」が登場していますので、ご紹介します。


(下記はキリヌキ記事です。記事本文へはタイトルからアクセスできます)

池上:そういえば、日本には高専=高等専門学校というものがあります。中学卒業後の5年制で、工学や技術を実践的に学ぶ教育機関ですよね。かつて「高専」というのはある種のエリートのイメージがありました。今はどうなっているんでしょう?

 

本川:高専は、日本の工学や技術の世界においてとても重要な役割を果たしていました。実は東工大にも編入制度があって、高専卒業後、東工大に編入する学生たちがいるのですが、みんな抜群に優秀です。現場を知っている。身体的に頭がいい。ところが、高専そのものは人気がなくなっている。単に「大学」の名がついていないからです。

池上:もったいない話です。

本川:日本は、少なくとも大正時代ぐらいまでは、もっと価値観に多様性がありました。たとえば「頭がいい」という評価はけっしてポジティブなものではなかったんですよ。どちらかというと「怪しい」とか「小ずるい」といった意味で使われることが多かった。むしろ評価されるのは、親の職業をきっちり継ぐとか、子供のときから体に技術を仕込んでもらっている、ということでした。
 そんな優れた身体を持った人たちが、日本の製造業やサービス業や学問の現場までをも支えてきたんです。それが今、みんな大学に行っちゃうから、「優れた身体」「優れた技術」を持ったひとたちが、減っています。設計図を引いただけでは家は建ちません、建てる人が必要なんです。
 でも、大工さんより建築家の方がなんとなく偉いと思われています。そこにもう一言付け加えると、体そのものより、体の設計図であるDNAの方が大切で、だから生物そのものの研究者よりDNAの研究者が偉い、と考えるのが今の世の中です。

池上:そこまで脳みそ至上主義が徹底してしまっているんですね。

 

(前後の記事は日経ビジネスONLINEでご覧ください)